2020年4月14日火曜日

三年生のゼミ生へ18

今日は、次の注167)をやってみましょう。
前回と同じように、インターネット上にあるデータベースを使います。

この注は、「クローヴの古名は、未熟な花蕾の形にちなんで『鶏舌の香料』、新名は『爪の香料』、そもまた形に由来する。我々の『クローブ』という語はラテン語の clovis (釘)、古フランス語の clou つまり『爪」から来ている。」という文章についています。
この根拠となったのは『本草綱目』という本で「巻34、p28a」にそのことが書いてあるのです。『本草綱目』は国立国会図書館のデジタルコレクションにあり、巻34の35丁裏は
こうなっています。
『本草綱目』は明代に李時珍という人が書いた薬草の解説書です。李時珍は色々な本を参考にして書いていて、誰のなんという本を参考にしたのかちゃんと書いてくれているのです。
まず一段上に「丁香」とあって、項目が記されているいます。次に「釈名」とあって、これは名前の解説です。次に「集解」とあって色々な本から「丁香」に関する記事を集め。それを解釈を集めたものという意味で「集解」と言っています。この「釈名」に丁香には「丁子香」とか「鶏舌香」という名前がありますよとあって、その「鶏舌香」の下に一行を半分に割って「藏器曰」とあって、その文字を四角で囲んでいます。続けて「鶏舌と丁香とは種を同じくす。」とあります。この一行を半分に割って注を施すのを割注といい、古い本ではよく見かけます。昔の注の付け方の一つです。ここで言っているのは唐の時代の「(陳)藏器という人が次のように言っています。」、「鶏舌と丁香とは同じ種類です。」という意味です。
さて、これで唐の時代には「丁香」が「鶏舌香」と呼ばれていたことが分かりましたが、シェーファーは本当にこの二つのものが同じかどうか疑問を感じた様です。そこで、宋の時代に沈括という人が書いた『夢渓筆談』巻26という本を提示します。シェーファーは巻き数とページ数だけしか示してくれませんが、私たちはシェーファーのいうことが本当かどうかを確かめるわけですから、『夢渓筆談』を探します。この『夢渓筆談』は梅原郁の日本語訳がありますが、今は見ることができないので、維基文庫に該当部分を見つけることができます。そこには「『斉民要術』を按じるに、『鶏舌香、世よ其れ丁子に似たるを以て、故に一名丁子香。』と云う。即ち今の丁香是れなり。」とあります。つまり、『夢渓筆談』は『斉民要術』を参考にしています。では『斉民要術』にはどう書いてあるか確認しなければなりません。『斉民要術』賈思勰6世紀の中頃に書いたもので、維基文庫の『斉民要術』には巻7、第66の「和酒の作り方」に「鶏舌香」と出てくるだけです。それは中国哲学書電子化計画のデータベースにある『斉民要術』も同じです。
国立国会図書館には『津逮秘書』本の『斉民要術』があります。

また、早稲田大学の古典籍データベースには
もう少し読みやすものがアップされています。
そしてどちらにも「鶏舌香」は出てくるものの、それが「丁香」であるとは書いていませ。どちらも名前だけで「鶏舌香」が「丁香」であるとは書いていません。つまり「鶏舌香」は唐代より以前からあったと言う証明にしかなりません。おそらくシェーファーは沈括の言葉をそのまま信じて、『斉民要術』の記事を確認していないのではないかと思います。
こうして一つずつ確認していくと、シェーファーがどの様にして「丁香」のことを調べているかがわかってきます。
こうして、選んだ項目の注を全て突き止めるのがミッションです。もちろん、先ほども述べた様に、最終的には必ず紙媒体のもので確認することと、多くの本が日本語訳が出ているので、それを確認することも大事です。『斉民要術』のこの部分は田中静一等によって日本語訳が出ており、そこには「チョウジ『鶏舌香』…。『丁子』と称し、広く知られた香辛料である。…。」と注がついている。

こうして調べたものから、本文のどの部分が資料で、資料のどの部分を引用しているか、また、参考にした本は何かなどを整理して、レポートとして出してもらいます。それを発表してもらうのです。
プリントの仕方などはまた先にアップします。

デッドラインまであと609日です。

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