2020年4月13日月曜日

神戸学院大学 人文学部 大原ゼミが気になる皆さんへ

キングダム見ました?
中心となるのは李牧ですよね。では、李牧がどんな人物か、彼の過去の事績を追って見てみましょう。
『資治通鑑』「始皇帝」です。

それでは、解説します。まず、声に出して読んでください。
「モウゴウ カンをうち、じゅうにじょうを とる。」
「チョウオウ、リボクをもってしょうとなし、エンをうち、ブスイ・ホウジョウをとる。」
てう=ちょう、ゐ=い
です。
「李牧は趙国の北の国境を守る、素晴らしい将軍である。以前、代と言う場所の雁門というところを守っていた。北方の遊牧民である匈奴の略奪に備えていた。適度に官吏を配置し、市場での収入は兵隊たちの費用とし、毎日牛を何頭も殺して宴会をし、騎馬や弓矢を練習させた。辺境に敵が入ってきたことを知らせる狼煙(のろし)はあげさせず、スパイを多く利用した。みんなに「匈奴がもし侵入してきて盗みを働こうとしたならば、急いで家畜と共に城(日本のしろとは違い、城壁に囲まれた町)に逃げ込み、匈奴を捕虜として捕まえたものは、斬る。(つまり捕まえてはならないという意味)」と約束させた。
匈奴が侵入するたびに、狼煙はあげず、城に逃げ込んで戦わないようにしていた。こうして数年がすぎたが、失うものはなかった。
匈奴は自分達を恐れているのだろうと思っていた。
趙の国境警備兵も、将軍はビビっているのだろうと思った。趙王は、そのことを責めた。李牧は、そのままであった。王は怒って、別の人間に交代させた。一年余り、しばしば出撃したが、利益はなく、失うものばかりが多く、辺境地帯では、田を耕したり、家畜を飼ったりすることができなかった。
王はまた、李牧にお願いした。李牧は扉を閉じ、病気になったと言って出てこなかった。王は無理にお願いした。李牧は「どうしても、私を使いたいのであれば、以前と同じ様にして、さらに私に命令しないでください。」と言った。王はそれを許した。
李牧は国境に戻り、以前と同じ様にした。匈奴は、何年も得るものがなく、また恐れているのだと考えた。国境警備兵は褒美はもらうけれども、何もすることがなかった。
みんな、一度戦いたいと願い出た。
こしてやっと、戦車一千三百台、騎馬一万三千頭を用意し、歴戦の勇者五万人、弓矢の上手なもの十万人に訓練をほどこし、盛んに放牧させ、人々を自由に外に出し、人々は野にあふれた。
匈奴がわずかに侵入した。騙して逃げ、負けるふりをして、数千人を敵地に捨て置いていた。匈奴の王は、その知らせを受けて、部下をたくさん引き連れて侵入してきた。
李牧は特殊な陣形を使い、左右に展開し、攻撃して、匈奴の騎馬隊十数万人を殺し、タンラン族を滅ぼし、トウコ族を破り、リンコ族を降伏させた。匈奴の王は逃げ出した。その後、十数年、匈奴は趙の国境に近づくことはなかった。」

李牧のすごさが分かりますか? 李牧という人物は、数年先を読んで、策を練っています。それは敵だけでなく、いつも逃げてばかりの警備兵の心理も掴んでいるんです。我慢に我慢を重ねさせているんですね。しかも、それだけでなく、戦っていないのに褒美はあげるんですよ。宴会もするし、ここまでされたらもう我慢できないでしょうね。
趙王との駆け引きの様に相手の心理を巧みに使っています。本当はいく気もあるし、匈奴に勝つ自信もあるのに、二度と趙王に邪魔されない様に、病気とかなんとか言って駄々をこねるんですね。しかも、この文章の流れだと、趙王も李牧が仮病を使っていることを知っているみたいです。そうでなければ、病気の将軍に無理は言いません。おそらく李牧は何らかの方法で、仮病であることを趙王に知られるようにしていたに違いないでしょう。なかなかの策士なんです。
匈奴が攻めてきた時も、戦争の準備ができているにもかかわらず、一旦逃げます。しかも、単純に逃げるだけでなく、味方の兵士数千人を見捨てるんですね。恐ろしいことです。しかし、この数千人の兵士を見殺しにすることで、匈奴の王は、李牧がビビっていると信じてしまい、大挙して攻め込んでくるんです。もし、単純に逃げただけなら、匈奴の王本人が攻め込んで来ないかも知れません。計算に計算し尽くされた心理戦です。
弱いと見せかけて、伏兵を潜ませ、攻め込んできたところをやっつけるなんて作戦は、腐るほど使われているんです。だから、それをどうやったら見破られないようにするのか。
常識の一歩先をゆく。これが、李牧の戦法です。

意味がわかったところで、もう一度声に出して読んでみてください。少し読みやすくなったんじゃないですか。

古代中国語をそのまま読んでいるのに、わりあい、読めますよね。外国語がこんなにすらすら読める方法を考えつくってすごいですけど、こんなことができる漢字を考えついた、中国人もすごいし、それを日本語として上手に取り入れてきた私たちもすごい。

歴史というのは、いろいろなことを教えてくれます。李牧の作戦は、常識となっていることを逆手にとっているんです。だから、騙されるんです。オレオレ詐欺と同じです。ちょっと疑うということを知っていると、騙されずに済むんです。
常識にとらわれない、そして常識の先を行くことが、勝利につながります。その常識を知らないと、勝てません、そして常識は大学の普段の授業を真面目に受けることで知らず知らずに身についているんです。

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