皆さんのやりたい項目が、だいぶ私のところに集まっています。
人質を選んだ人が何人かいますが、人質は中の数が5個と防御力が少なすぎるので、人質を選んだ人は、もうちょっとほかのも考えてください。
馬を選んだ人もいますが、反対に馬は注が135個もあって、大変です。
後は、犬や、金を選んでいる人もいます。ジャスミンオイルや薔薇水も人気ですね。
それでは、今日から具体的な方法を説明します。
大原研究室のホームページにあるサマカンのように、自分の選んだ項目の注を一つづつ見つけ出していきます。
そうすることで、その項目がどのような資料によって組み立てられてるのかがわかるのです。全ての注=パーツを分解できたら、次の項目に移ります。そして、二つの項目を分解し終わると、このセメスターの一つ目の使命を果たしたことになります。
本来なら、図書館や研究室の本、さらには先輩たちのアドバイスを仰ぎながら、また、同じ項目を分担している仲間と情報を交換しながら、隠れているエッセンスを見つけ出していくのですが。自宅学習を続けている私たちではそれができません。
今では、インターネット上にたくさんの情報が流れていますから、それらを駆使すれば、ある程度攻略できます。
どのように攻略していくかを翻訳も注もある「クローブ」「丁香」を使って説明します。
『サマルカンドの金の桃』の本文は以前に紹介した、試訳「クローブ」を見てください。
そして、注は大原研究室のホームページにある「丁香」を見てください。
大原研究室のホームページの注166がつけられてる文章は、この丁香を「食物」「薬」の項目に入れずにどうして「香料」の項目に入れたのかということがらに対して、それは唐代においては香料として扱われていたからだと、説明するものです。
そこで、丁香(クローブ)が唐代には香料として利用されていた証拠を示さなければ、光量の項目に入れることに対して、理由がなくシェーファーの勝手な判断によるものだとされてしまいます。したがって、それを証明するために『香譜』という本に「丁香」の調合法が載っている注をつけているのです。
ところがこの『香譜』という本はインターネットでそのまま検索すると「早稲田大学古典籍総合データベース」のものが引っかかります。しかし、これは日本で書かれたもので、中国の書籍ではありませんしたがって、おそらくシェーファーが参考にしたものではないでしょう。
つまり、『香譜』のままでは、シェーファーが引用した本は見つからないということになります。
そんな時には、「全国漢籍データベース」で検索します。
kanji.inbun.kyoto-u.ac.jp
にあります。ここで検索すると、215件も引っかかってきます。
ざっと見ると、『香譜』と言う本は、『新刻香譜』・『新纂香譜』・『陳氏香譜』・『香譜』と何種類かあることがわかりまります。そして『香譜』と言う本は、「唐 闕名」つまり、唐代の人が書いているが著者の名前が分からないもの、「宋 洪芻」つまり、宋の時代に洪芻と言う人が書いたものの二種類のあることが分かります。
シェーファーは、唐代に香料として使われていたことを証明したいわけですから、188から202の『香譜』が怪しく、しかも「闕名」になっていますから、シェーファーが注で『香譜』に著者名を書いていないことも納得できます。
そして、これら『香譜』はどちらも『説郛』という叢書の中に入っていることが分かります。
で、今度は『説郛』をインターネットで検索すると、國學迷というホームページから
guoxuemi.com
《説郛一百二十巻pdf》《四庫全書说郛一百二十卷》…
というのがあります。
それをクリックすると「國學迷」という中国のページに行き、そこにある「输入检索」に「香譜」と打ち込むと『香譜』の中身が見られます。その「巻下」には確かに「丁香」の項目があります。ただ、本当に項目だけで、内容がありません。この『説郛』と言う叢書は、紆余曲折へて現在あるので、同じものが何種類も出版されています。それら三種類のものを『説郛三種』として、1988年に上海古籍出版社から出版されたものが研究室にありますが、今は研究室に行けませんので、この四庫全書に納められている、陶〓(王へんに廷)本を使います。この『四庫全書』と言うのは、清朝の乾隆帝によって18世紀に編纂された中国最大の叢書で、この世にある感じで書かれた本を全て集めることを目的としています。したがって、1800年より前の本は大概ここにで見つけることができます。さらにさらに、この『四庫全書』がうちの図書館にあるのです。近畿圏の図書館でこの『四庫全書』を揃えて持っている大学は京都大学、大阪大学、関西大学などわずかです。
国立国会図書館のデーターベースでは、宋代のものを見ることができます。
ひょっとすると維基文庫を見つけた人もいるでしょう。
まだ、いくつかのデータベースで四庫全書を見ることができますが、大学が始まったら必ず、本の実物にあたって下さいね。まだ、インターネットの資料を利用するには信頼性が確立されていません。今回は家から出られないという条件があるので、仕方なくインターネットのみで作業を進めていますが、実際に卒業研究を書く場合には必ず、紙媒体で確認をとって下さい。
今回色々調べていく上で、『香譜』と言う本が何種類もあることがわかりましたね。
シェーファーが見たのはおそらく著者不明の唐代のもので、したがって、注の内容も愛想のない、簡単なものになっているのではないでしょうか。
四庫全書の『香譜』巻下には「蜀王薫御衣法」に「丁香 〓(香へんに戔)香 沈香 檀香 麝香 已上各一両 甲香 三両製如常法 右件香〓(手へんに壽)為末用白沙蜜軽煉過不得熱用合和令匀入用之。」とあり、「毬子香法」にも「丁香 檀香 茅香 香附子 白芷五味各半両草荳〓(くさかんむりに寇)」などとあり、確かに唐の時代に書かれた『香譜』という本では丁香が香料として使われていることがわかります。
ただ、同じような内容のものが洪芻の『香譜』にも出ています。早稲田大学所蔵のものは日本で書かれた写本(手で書き写した本)で、中国の『本草』などを利用して書いているものもありますし、様々な資料から自分の必要なものを探し出す訓練にもなったし、シェーファーが見落としてた資料も見つけることができたでしょう。
そのスキルは何かに興味を持った時に、どのような資料がどこにあるかがわかり、その資料をどう扱うを理解するのに役立ちます。